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歌麿をめぐる五人の女('46松竹)溝口健二

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マキノ雅弘の『マキノ雅弘自伝 映画渡世』にちょこっと登場するところによると、戦後のストライキ中にわずか一週間で撮影されたらしい。だけど意外とロケも多い。

主人公は町の絵師である歌麿。お師匠さんと慕われて、「5人の女」をはじめとしていろいろな人の面倒をみている歌麿は、軽い感じで好感が持てる。面倒見ている男のかっこよさ。

当然、溝口健二は意図的にそういう軽さ淡白さをかっこいいものとして、重々しいなりをしてそのくせ大した考えもない男(武士)をダメなものとして描いている。

クライマックスでは溝口健二らしい迫力の刃傷沙汰もあり、まあまあ楽しめるが、ストーリーは断片的で溝口健二の平均よりは劣るかと。なにより、「美女」として出てくる女がことごとく美しくない。戦後ゆえの人不足か。

特に大名が町で見つけた美女を裸にして海で魚をとらせて遊んでいるところ。これでもか、という見せ場なだけに、あのシーンはロケーションだけど、かなり脱力する。「裸」という設定で着物を脱いで見せるときのさらしのようなやつ。あれにはげんなり。ベスト尽くしてこれか、という脱力感。

まあ、エロは時代の制約が大きい。
そしてあえて毎回言うと、田中絹代のよさはまったくわからない。