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JLG/JLG ('95)J=L.ゴダール

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ゴダールの署名付き映画ということで「ジェイエルジー・ジェイエルジー」と発音します。サブタイトルは「12月の自画像」。かっこいい。ゴダールの主張は意外と明確。なぜか「自分は喪に服している」という設定。

レマン湖のほとりで孤独に映画を撮っているゴダールの生活ぶりが垣間見えます。部屋とか本棚とか、あのノートとか、本当の生活をそのまま映しているかどうかは極めて怪しいけど、ゴダールが自分の部屋と生活を公開してる感じで、それを見れるのはうれしい。

ところで、DVDに浅田彰と蓮実重彦のレクチャーが入っていた。2002年に昔のユーロ・スペースで上映されたときの講演で、特に浅田彰がかなりわかりやすい解説をしている。

いわく、これは『映画史』からエッセンスを取り出した高密度な結晶である。とはいえ、いささかかっこよすぎる。でも、それもまたコミカルでよい、と評価する。この映画でゴダールは作家人生で一区切りをつけたことになってるらしい。さらにゴダールには、いまの一瞬一瞬が映画であって欲しい、という駄々っ子のような欲望があり、これはそれを極力実践するための個人的な映画とのこと。

また、『映画史』も含めて繰り返しゴダールを見ていると判ってくるが、100個くらいの限られたカードを、いろいろな形で切っているだけなんだけど、それを毎回まったく新しい形で見せるのがゴダールのゴダールたるゆえんといってます。なるほどねー。

蓮実重彦のは、解説というよりも「5つの光源」といういかにもハスミシゲヒコっぽいテーマ。あの評論の文体みたいに淡々とした口調で話す氏の姿が見れてこれはこれで最高。

この映画に出てくる「ステレオ理論」(ゴダール自身が図を描きながら説明してくれる理論。写真参照。)に見られるゴダール独自の理論は、感心して参考にすることはあっても決して信用してはならない、というゴダールとの個人的な折り合いのつけかたに話がまとまっていて圧巻です。

そのほか個人的な話として、東大の学長時代に仕事で知り合ったスイスの大学の学長にゴダールのこと知ってる?と尋ねてみたら、その人がゴダールの高校の同級生だった、とかいう話もありました。