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人のセックスを笑うな ('07/井口奈己)

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タイトルから連想するように随所にラブシーンがあるけど、それだけではなくとにかく2人のシーンが多い。設定が少ないわりに映画が2時間を超える長さになる原因となっているのは、ひとつひとつのシーンがやたらと長いからで、それぞれの「2人のシーン」も、2人の関係性を伝えるために必要な長さよりはすこしずつ長く続く。ちなみにセックスのシーンについては、正確にはキスシーンで、リアルです。

2人のシーンが多いなと気づくと、そういえば映画の冒頭で酔った永作博美が美大の仲間3人組(松山ケンイチ・忍成修吾・蒼井優)が乗る軽トラックに拾われて荷台にすべり込むとき、すぐさま一人が降りて後ろに移り、そこで3人対1人ではなく、2人対2人の体制になっていたことを思い出す。後ろにいった男は拾われた年上の女に惚れ、一方で前に座る女には惚れられていて、その女は運転している男に惚れられているという構図の中で、少しずつその後のストーリーが進む。その中での楽しみどころは、横に並んだり、向かい合ったり、上下になったり、距離をとったりと、いろんなパターンで出てくる2人のシーンだった。

そういえば井口監督の『犬猫』もそうだった気がするけど、キャメラの固定された独特の間があるので入り込むのに時間がかかる。あとやたらと小物とか建物がレトロで、『犬猫』で女が住んでいた平屋の家も永作博美のアトリエとおんなじ感じだったことを思い出した。あれはああいう趣味なんだろう。挿入歌がよくて、永作博美が松山ケンイチと最初にデートして家に帰り、あの曲をラジカセでかけたあたりから楽しめるようになった。

独特の間といえば、この映画を見ていてロメールの『夏物語』を思い出した。ロメールのように、さほどつながりが強くないシーンをひとつひとつつなげていく感じがある。ロメールの映画と比較するとはるかに言葉が少ないという違いは明らかで、そこは日本映画っぽさではあるが、言葉の内容のなさはかなりのものではある。

蒼井優はかなり子供っぽい感じだけど、落ち着きのなさが軽くてとてもかわいいです。