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オーソン・ウェルズのオセロ('52)オーソン・ウェルズ

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" Speak of me as I am: nothing extenuate, "

オセロだけに白黒。フィルムに光が焼きついて、それが白黒になって、奇跡の映像がいまあなたの目の前に(・・・と思ったら日本にはDVD無いね。すみません。Region1でよければ貸します)。オーソン・ウェルズの天才が炸裂した50年代初頭の傑作。かなり前にビデオで見たことがあって、そのときにも見たことのない映画を見たと思ってオープニング、温泉場の印象、そしてエンディングは覚えていたけど、見返してみて、どのシーンもやっぱりすごかった。台詞回しはオーソン・ウェルズらしくすごく切羽詰った感じのリズムで、ストーリー展開も早い。エンディングのかっこよさを見るためにも、やっぱり誰でもいいからこの映画を見て欲しい。

もちろん原作はシェークスピア。悲劇です。徹頭徹尾暗いです。俺はシェークスピアって読んだことないので、大体映画になってないと詳しいストーリーは知らないんだけど、映画がいいとストーリーも好きになるので、オセロはかなり好きです。字幕なしで見たけど(DVDに字幕ないんです)、台詞が難しくてほどんど聞き取れない。ただ、ヴィジュアルがかなり説明的かつ的確で、画面だけみててもストーリーをほとんど把握できるようになっているらしいのは発見だった。

主演のオセロとナレーションはウェルズがやっている。オセロがもったいぶって登場する最初のほうのシーンはけっこう笑える。なんといっても、シュザンヌ・クルーティエという女優の(ゴダールの)映画史上でもフィーチャーされるヒロインが切ない。あのクローズ・アップは切ない。彼女とのシーンはソフトな画面だけど、屋外の海だの城壁だのが見える場面ではこれでもかというくらい硬質な画面がみられる。どちらも極端だが、どんだけかっこつけてもウェルズがやれば、そのまんまかっこよさが倍増してゆくので、何の心配も無い。あとはマイケル・マクラマーというのが悪役だけど、この人はウェルズの親友だったみたい。端役でレベッカのジョーン・フォンテーンが出ているけど、見つからず(ジョーン・フォンテーンってまだ生きているのね。91歳。すげえ。しかも東京生まれか)。

上映された当時、カンヌ映画祭でグランプリ(今で言うパルムドール)をとったものの、撮影時の苦労やその後のフィルムの紛失など、かなりいわくつきの映画です。資金繰りも厳しくて、ウェルズはかの有名な凡作第三の男などの出演料をこの映画の製作費にあて、長期間にわたって断続的にこの映画を製作したそう。ほとんどの撮影はモロッコで、映画の舞台はヴェニスだけどかなり乾いたイメージがある。最初に撮影したシーンが温泉場のシーンだったらしいんだけど、そもそもその日までにモロッコに届いた衣装が全然足りず、かわりにタオル1枚の衣装で撮影できるという理由で設定を温泉場に勝手に変えている。しかも腰や頭に巻いているタオルはホテルから借りてきたとのことです。