I Had A Dream ⑤
「いつだってあんまりやる気がないのです」
彼はそう言って、あの、非常に人間を不愉快にさせる表情をすると、
こともあろうかこう言い放ったのでした。
「だから、世の中を変える前に、俺が変わるんです」
声のトーンもますます不愉快なものになっていく。
「でも、やる気はないんですよ。ヒュルルル(唾と空気が一緒に口から出たり入ったりする音)。」
仕方なく俺が爆音でやる気満々のフリをすると、彼はいたく感動したようで、こう言った。
「やる気はないにしろ、あなたのような人のほうが幸せに違いない!
どうですか? 僕を一生あなたの見物人にさせてくれませんか!」
俺はダッシュでその場から逃げ出したが、その際にチラッと彼を振り返ったのだった。
それがまずかったのだ。
彼はもう、これでもかってなくらい幸せそうな満面の笑みを浮かべていた。
その笑いは、やる気が無い人間なら誰もが一度は羨む、
やる気が無い人間には絶対にできない表情なのだ。
どうやら俺が彼の見物人になることはそのとき決まったのだ。
ところで、俺の親父といえば今にもアル中になりそうで、俺のお袋といえば今にも病気が再発する勢いで、俺の兄貴といえば相変わらず劣等感の塊である。
全てが相変わらずだなあ。
家族の中じゃ俺が一番やる気がある気もする。
そんなもんだ。
もう一杯ターキーダブル下さい。
あと、オリーブも。
え? そんなんで明日は大丈夫なのかって?
楽勝っすよ。
なんてったってやる気満々ですから。
(つづく)