I had a dream ⑥
いつもどおりに道をテクテクと歩いていると、顔馴染みのあいつが俺を呼びかけたのだった。
こっち、こっち、と手招きするので、従うままに暗い路地裏へと入っていくと、いきなりナイフを突きつけられた。
話を聞くとどうやら俺のことが気にいらないということのようだ。
更に話を聞くとどうやら彼は時代遅れの極貧の極左気取りの危ない奴だったのだ。
更に話を聞くとどうやら彼のような輩がこの街にはまだまだたくさん居て、
俺の知っている奴等の中には俺のことを気に入らない奴がたくさん居るらしい。
更に話を聞くと、この街の殆どは俺のことを気に入らないらしい。
はあ、そうなんだ、と軽い衝撃を受けてポカーンとしていると、彼は俺の右腕に長さ5センチ、深さ1センチほどの傷を刻んで、その上から巨大な銀の円形の腕輪をとりつけたのだ。
果たして一週間も経つと、俺の腕には無数の切り傷が刻まれ、無数の腕輪が歩くたびにジャラジャラと音を立てるようになった。
人に知れたら大変だと思ってジャラジャラが聞こえないように振舞いながら駅前の本屋に入っていくと、ニコニコと店員が声をかけてきた。
ああ、またか。
そう思って腕を差し出そうとすると、彼はそれを遮って、カウンターの奥から大きな黒いコートを持ってきた。これを使え、ということのようだ。
果たして俺は毎日その黒いコートを羽織って、ジャラジャラを極力抑えながら歩くようになった。
ついでだから全ての黒い服をほぐしてまた編みなおして、大きな黒い帽子を作り、それをなんとか被ってやろうと頑張っているのだが、いまだにその帽子を上手く編み上げることができない。
斯くして安息といえば、街の片隅にある綺麗な緑色の芝生に覆われたまん丸の丘の上でコートを丸めて枕にして昼寝する時だけになった。
この丘には誰も近づけないのだ。
(つづく)