パリ・オペラ座のすべて('09)フレデリック・ワイズマン
ワイズマンの映画は、『高校』(1968年)を見ただけだけど、この映画は『高校』と同じくかなり魅力的で見逃せない映画でした。ダンス映画としては"This is it"より面白い、といいたくなりますが、なんていうか、映画にダンスがうまい感じで出てくると、異様に面白いんですね。
ワイズマンのドキュメンタリーはナレーションもインタビューもない。対象は当然バレエ中心ですが、パリ・オペラ座の屋上ではミツバチを飼っていて、地下の池には魚がひっそりと住んでいるとか、そういうのもふくめてとくに脈絡もなく見せてゆきます。
分かりやすい説明は一切ないです。ただ誤解してほしくないのは、その手法ゆえにストイックで退屈で、高尚なものを我慢して見る、という映画ではないです。
見るとわかるのは、まず、異様に面白いという感想が残り(驚くことにその面白さの質は、『高校』のそれと似ている)、さらに時々、人々を(良くも悪くも)生き生きと撮るシーンがあって、そういうのが妙に記憶に焼きついてきます。シーンの最後に0.5秒ぐらいだけのカットで写る人が、ヘンに気になる表情していたりとか。この映画ではなまなましいのが一流ダンサーの練習風景だったりして、なかなか感動ものでした。
まあワイズマンの狙いどおり、いろいろ考えさせられることうけあいです。