「ニコラス・レイ」の「処女作」
夜の人々('48)ニコラス・レイ
「ニコラス・レイ」の「処女作」ということは、勝手にしやがれやパーマネントバケーションみたいなものですが、この映画がさらに伝説になっているのはそれらの作品を撮った監督達が最大限の賛辞を贈っているからでもあります。「そういう映画」としてインプットされたまま、ついに見ることになりました。
なんとなくわかった気になって見るモチベーションが下がことを危惧しますが、これは所謂ボニーとクライドの物語を下敷きにしたものです。切ないです。もともとRKOのB級映画で、さすが40'sのハリウッド映画だけあって無駄なシーンをぽんぽん省いて、「逃亡者はドアをノックされる度にドキッとする」というような重要なテーマは何度も繰り返されるような芸の細かさもあります。時にオーソン・ウェルズのような明暗の強いライトや角度のあるキャメラ・アングルもあり、ここぞというときのクローズ・アップが最高です。
じゃあそういう職人的なすごさ・かっこよさがこの映画の魅力かといえば、そうではありません。ニコレス・レイ独自の感覚があります。優しさ?みたいなものです。ヒロインのキーチはどんどん魅力的になっていって、ラストシーンでボウイに駆け寄ってきてからの映像はまさしく奇跡の映像です。
主人公の「ボウイとキーチ」は、それぞれをファーリー・グレンジャーとキャシー・オドネルという二人が演じてますが、意外にもそれぞれヒッチコックの『ロープ』やウィリアム・ワイラーの『我等の生涯の最良の年』に出演している、けっこうな大物のようでした。