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ハリウッド崩壊前夜 の1945-1955を追う(いまさら感、全くなし)

まずは・・

ウィンチェスター銃 '73 ('50)アンソニー・マン
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名作。『ハリウッド映画史講義』という映画必読書のひとつ(著者はいますぐに思い出せない(嘘))で、スタジオ・システムが健在だった時代のハリウッドでは、物語の運びこそが肝心で、それを阻害する可能性がある撮影の美学は、あくまでストーリーの枠内でしかスクリーンに出ないと指摘されていたけれど、ハリウッドが崩壊前夜に撮られたこの映画では、まだまだ西部劇らしい、素敵に簡潔なドラマが展開される。

とはいえ同書で指摘されているように、アンソニー・マンは普通の監督ではない。西部劇に高低差を基調とする異質な空間を取り入れた貴重な監督ということが、この映画ではよくわかる。が、まだよく輪郭がつかめないので、当面はアンソニー・マンを追うことにする。アンソニー・マン、67年に早死にしている。ルキノ・ヴィスコンティよりも10年、ジョン・ヒューストンよりも20年、早く死んでいるけれど、実は彼らと同い年だった。

で、この映画だけど、つい「'73」とか言われると1973年のことかと思うけど、西部劇なので1873年のことで、ウィンチェスター'73とは「インディアンさえも魂を売る」という最高に評価が高い「千本にひとつ」のライフル。この映画はそのライフルがふさわしい男の手に入るまで、という筋をアウトラインにして、それがごく自然な感じで他のドラマとからんでゆきます。

さて、とはいえライフルのことはどうでもよくて、この映画で印象的なのは、「強い男」としてのジェームズ・スチュワート。そしてその相棒役のミラード・ミッチェルとのコンビ。そして悪役のダン・ドュリエ。裏窓めまいといった50年代ヒッチコック映画でおなじみのスチュワートには、基本的にちょっと老いたイメージがある。でも、ハリウッド・フィフティーズが始まらんとする1950年当時のこの映画では、かなり若く、ヒーローとして活躍している姿が見られます。写真のシーンでダン・ドュリエを牽制する目つきは圧巻。