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日本の映画監督の中では神代辰巳が一番好きかもしれない。

神代辰巳の映画には昭和のイメージが色濃くある。日活ロマンポルノ時代はロケが多く、70年代の日本の街並みが生々しくのこっているからかもしれないが、そんな映画は神代作品に限られない。登場人物の、強情だが人懐っこい性格がそれを感じさせるのかもしれない。ちなみに誤解をしてもらいたくないので一応言っておくと、ここで言っている「昭和のイメージ」とは「昭和三十年代」「昔は貧しいけれどみんな目標をもってた」的な義理人情性とは無関係である。

ではどんなイメージかというと、結論を言ってしまえば、映画を見るしかない。画面はシネマスコープ。音声はアフレコで、モノローグのような台詞まわしになっている。ポルノというジャンルの枠内で撮られたので、常に身体が組んず解れつしていて、画面にぴったりはまっている。とはいえ、この「モノローグ」「組んず解れつ」という作風は、その後普通の映画になっても受け継がれてゆく、神代映画ならではのものである。

それにしてもこのグルーヴはなんだろう。いかにも天才が残したフィルムという気がする。ジョン・カサヴェテス性。キャメラは手持ち感満載で、よく自転車や自動車に乗ることもあっていつも移動している。音楽も、いい。けっこう登場人物が歌いだす。なんとも切ない。こんな神代映画は偏愛する価値がある。

赫い髪の女は一度しか見ていないけど革命的な映画だと思っているし、アフリカの光なんて、傑作イメージが強すぎてもういちど見るのが怖いくらいで、そして最初に見た神代映画であるもどり川は、その衝撃を今でもよく覚えている。

そんな神代作品、日活ロマンポルノ時代の作品がけっこうDVDで見れるようになっていたことに、先日気づいた。いまさらなにをであるが、日活ロマンポルノの世界的な再評価の波が来るまでに、その最大の監督である彼のフィルモグラフィを埋めて行きたい。

でも、本当は、下のジャケットみたいにポップなポルノ調のままDVD出すんじゃなくて、世界に(というかヨーロッパに)売り出すために、もっと生々しいジャケットにしてかっこよく売り出して欲しい。ちゃんと外人(というかヨーロッパ人のインテリ)がくいつくように売り出してくれ!

恋人達は濡れた('73)
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初期の作品である。神代氏は、処女作で興行的に失敗したので、しばらく干された後、ロマンポルノでどんどん作品をとるようになった。そんな、好き勝手やっていたころの作品と位置づけられている。主人公のキャラクターや、当時の若者の無気力な感じなんかが主題なんだろうけど、まあどうでもいい。

なんかこの日本、貧しいなあ。アフレコもいいなあ。傑作シーンがいっぱいあるなあ・・と思いつつダラダラ見る。

悶絶!!どんでん返し('77)
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エリート・サラリーマンが、チンピラにおかまほられておかまになる。彼らをとりまく数々の女・・。この混沌。常軌を逸している。混沌をそのまま映画にできるひとはざらにはいない。そこに矢野顕子の「あんたがたどこさ」がかぶさるすごさ。ちなみにこの映画は、けっこう笑えます。

コメント

ふーん意外。

日活ロマンポルノは好きになろうとしてるんだが、めちゃくちゃにすりゃいいってもんじゃねーだろ、って感じでどうもあんまり乗れないんだよな。

「悶絶!」は笑ったし面白かったけど、無駄に暴力シーンが多くて疲れた。(「無駄に」が重要)


おっとすまん。コメント気づかず。

たしかにロマンポルノは、やりたい放題だよなー。現場にはいたくないね。おそらく神代氏はサディストです。

『もどり川』見ろって。『や川』って名乗りたくなったりして。うひゃひゃ。

もどり川、パっと探した感じだとDVD無いみたい?
なんか持ってたら貸して

すまーん。DVDねぇ説。

VHSで借りられるかどうかってとこか。俺は持ってないや。

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