« ラジオ・デイズ きたる!(あ、いやこれは映画の話じゃありません。) | メイン | 接吻('07)万田邦敏 »

新平家物語('55大映)溝口健二

012_sinheike.jpg

ま、雷蔵がかっこいいし話も面白いけど、これ溝口健二か。とは思う。'50年代の傑作群の中では見劣りするかと。
原作は吉川英治の小説で、その中の平家が勃興する直前のみにフォーカスしている。「総天然色」「超大作」みたいな大きな扱いだったみたい。セットや美術が印象的で、群集の魅力というべきものがあって、延暦寺やら、市場の雑踏の中から人がわらわら出てくる感じが、さすが50年代。ストーリー上重要な説明もこの雑踏の中からなんとなく聞こえてくるあたり、よくできてるなと思う。没落貴族の家の屋根がはがれていたり、全体的に埃っぽかったり煙たかったり、美術が今じゃあ見れないようなリアリズムでいい。

俳優については、やはり市川雷蔵。普段は普通な感じなのに、ラスト近くで矢を持ってわめくあたり、顔つきが変わる化けっぷりの迫力。木暮実千代は初めて意識してみたけど、そんなにセクシーだろうか?そういう役どころではあるけど。あと、実際に公家の末裔であり、戦後の境遇の変化を案じて生活のために女優の道を選んだ女優といわれてる久我美子。彼女が、やがて主人公の嫁になる、没落した公家の娘を演じているのがおもしろい。最初に登場する糸を洗っているシーンがさわやかでいい。だけどその後もずっとクローズアップがないので顔がよく見えない。絶対にかわいいのに見えない。まあいいけど。