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潜水服は蝶の夢を見る('07)ジュリアン・シュナーベル

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ロックト・イン・シンドロームといって、脳の障害により意識ははっきりしているものの体が全く動かない、という状態になってしまった主人公が、唯一動かせる左目を通して外界とコミュニケーションをとる。もともと主人公は雑誌Elleの編集長だった人で、善人でもなく悪人でもないそっちの業界人っぽいひと。

左目だけ動くのでそこから世界を見るんだけど、見舞いに来る人が体は動かないけど全部理解している、ということをちゃんと理解できていたりできていなかったりして面白い。上の写真は唯一動く左目の瞬きでコミュニケーションをはかるべく、医者がアルファベットを読み上げることを説明しているシーンで、みんなこうやって会話するので、映画の中でこの使用頻度順の配列で並んだアルファベットを「エ・エス・ア・エル・・・」って読み上げるというシーンが何度も出てくる。体は動かなくなっても、記憶と想像力だけはまったく失わなかったというように、そこから瞬きだけで本を出版するところまでゆく。

スタッフはスピルバーグのスタッフが結集したということで、撮影がヤヌス・カミンスキー。主人公はミュンヘンで犬を連れて歩いていたあいつで、誰かに似ているマチュー・アマルリック。一癖ある男で、ちょっと生意気なところがあるこの作品の主人公とぴったり。妄想のなかでアシスタントの女と豪華な食事をするところがあるんだけど、あそこはよかった。ポランスキーにちょっと似てるっちゃにてる(母親はユダヤ系ポーランド人とのこと)。カミンスキーも左目から見える世界などでいい仕事してます。病院のテラスからみえる風景で主人公が「チネチッタ」と名づけている場所が、なかなかいいです。

題名が『アンドロイドは羊の夢を見るか?』にすごく似てるけど、関係なくて、こっちの題名には最後に「か?」は付かないのでご注意。