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「四季の物語」冬・秋・夏/エリック・ロメール

ロメールは数年間かけてシリーズものを作るということを何回かやっていて、そのうちの「四季の物語」シリーズをまとめて見た。これは90年代にロメールが春夏秋冬を題名にして撮ったシリーズ。テーマは全部あたりまえのように恋愛。これでフランス人の恋愛をまとめてしまうと、月並みな感想だけど、フランス人の恋はおそろしくタフで、かつ繊細だ。すごくしつこい積極性を見せるくせに、あきらめるときは異常にあっさりとしている。そしてかなりオープンで、なんでも話しをする。関係がいいときも悪いときも、とにかくよく会話をする。

これらの映画に共通することといえば、ロメールのマジックなので説明が難しいけど、そのこれでもかという意外な展開の数々ときわどい省略っぷりは、ジャン・ルノワールの映画でしか見れないある種の賢い楽観性を思い出した。今回は作成の順番は無視して冬からはじめて秋・夏と、さかのぼって見た。年内には春を見れず。

冬物語 Conte d'hiver (1992)

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旅先でひと夏の恋に落ちた二人だが、別れ際のちょっとした手違いでお互いに連絡がつかなくなってしまう。女は妊娠していて、その後父親が見つからないまま子供を生む。映画では、その生むまでのプロセスがばっさり省かれている。映画のメインの部分がはじまるのはその後で、その女が周りの男を振り回しまくる。彼女の言い分はめちゃくちゃだけど、まあ筋は通っていて、それを聞いていると、こわいながらも引き込まれる。というか、彼女のキャラがだんだんたってきて、気づくと応援している。冬だけあって、水かさが増えた河の中洲とか、教会とか、寒々しくてこれが泣かせます。あと子供は文句なしでかわいい。

恋の秋 Conte d'automne (1998)

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葡萄畑がある田舎の町を舞台に、中年(熟年)の恋が描かれる。「秋」なだけにね。ロメールの映画の人物は、最初は印象が薄い人物でも、見ていくうちにほぼ全員が魅力的になってくのがすごい。この映画ではトラブル・メイカーのようにいろいろとからんでくる大学生の女の子が奔放なキャラクターで、なかなかかわいい。秋を描いただけあって、結婚パーティが庭で開かれるシーンなど、落ちてゆく夕陽と人物がたたずむ姿がなんとも美しい。またまた河も出てくる。結婚式のしめとしてのダンスシーンで終わるエンディングは、いつものロメールの例外でなくあっさりしているけれど、このシーンはかなりの名シーンだと思う。

夏物語 Conte d'été (1996)

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上の二作と違う作風で、かなり大胆な構成。一人で避暑地に来た(かなり)優柔不断な少年を中心に、3人の女の子が出てくる話。当然その3人と少年の恋のお話。ところが4人が一緒に出るところはなく、それどころかそのうちの3人が同じ画面にいることもほとんどない。ほとんどすべてのシーンは少年が一人でいるか(はじめ彼は一人で避暑地に来るので、そのときの手持ち無沙汰な感じがよかった)、女の子のうちの誰かと二人でしゃべっている(この映画は、上の二つに輪をかけて、ほとんどのシーンでしゃべり続けている)。こういうと他愛のない話のようにみえるけど、そもそもこの話は7月の中旬から8月の初旬までの毎日を一日ずつ追ってゆくという形式になっていて、その中でなかなかのドラマが生まれてくるので面白い。エンディングで少年の台詞が泣かせる。