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回路('01)黒沢清

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『回路』を見るのは少し遅すぎたかもしれない。俺、回路見た気になってたところがあって、実は見ていなかったのです。『CURE』と似てない?『CURE』も記憶がおぼろげです。『アカルイミライ』以前ということで明らかに作風が今とは違う。なにが違うかというと、なんとなく淀んでいる。輪郭がはっきりしていない。人はシミになって消えてゆく。

幽霊にまつわる部分、相当複雑で難解でよくわからないけど、かなり怖かった。ドアの隙間に貼る赤いテープは怖いなあ。黒沢清の作品では一番怖いと思う。幽霊に取り付かれるとふさぎ込んでしまうところや次々と周りに浸透してくる感じは、現実の社会でいうなら鬱病に近い。「こっち側」だったはずの人がいきなりふさぎこんでせっせと赤いテープを貼り出しているあの怖さ。一人暮らしの部屋がPCの画面に映し出されるが、その不気味さも、俺の暮らしも客観的に見たらけっこう怖さあるかもな、と思わざるを得ない。

脇の登場人物では、小雪が出てきます。かなり怖い。小雪が正気を失うのは怖いです。主人公の一人である麻生久美子がいい。声に癖があるけど、あの声誰かに似てるんだよなあ。ちょっと昔のひとなんだけど、知ってたら教えてください(思い出した。鶴田真由に似てます)。あの屋上に温室のある職場で、ちょっと不吉な気分のときに「変なことおきてないよね?」とかそばの女に言われたりしてるけど、麻生久美子が行動をおこそうとして「私、見に行ってくるわ」とかいって出かけようとバッグに手をかけると、それだけで事態が悪化しそうというあの感じ、似合ってます。そりゃみんな止めるわな。結局、彼女には誰一人救えなかったなあ。

最終的になんとモーターボートで東京を脱出するんだけど、そんな発想日本人にあるのか?幽霊に占拠されてしまった東京をモーターボートで脱出。あのあたり、50年代アメリカ映画の「ボディ・スナッチャー」性を感じます。で、役所広司が船長である船舶に拾われて終わる。無理やり海に出た感じがすばらしい。あと、最後のほうで飛行機落ちてきます。